家族が死亡事故にあった場合

①示談交渉の流れ

一般に交通事故の損害賠償請求をするとき相手の保険会社と話し合うことを「示談交渉」と言います。基本的な示談交渉の流れは次の通りです。

相手方の任意保険会社から示談案が提示される

被害者は提案された示談金額について検討する

示談内容に納得できれば示談内容に合意する・納得できなければ増額交渉する

合意内容を「示談書」または「免責証書」として取り交わす

示談交渉を始めるタイミングには十分注意しましょう。具体的なタイミングは被害内容によって異なりますが、ケガをした場合はケガが完治した後、後遺症が残った場合は後遺障害等級認定の結果通知後、死亡した場合は葬儀後または四十九日などの法要後に示談交渉を開始します。

和解が成立した場合

保険会社との示談交渉がうまくまとまり、被害者と加害者が和解内容に合意すれば、合意内容を記載した示談書あるいは保険会社所定の免責証書という書類を作成し、双方が調印を行います。これを保険会社に送り返し、示談成立となります。その後、締結された示談書に基づき、後日加害者側の任意保険会社から被害者に対して示談金が支払われ、死亡事故の示談交渉が終了したということになります。

和解が成立しなかった場合

保険会社と示談交渉をしても、金額について合意に達しない場合があります。この場合、死亡事故の解決は裁判の場に移行することになり、以下のいずれかの手続きによって解決を図ることになります。

民事調停

簡易裁判所にて、調停委員が被害者・加害者の主張を公平に聴き取り、相互間の調整を試みて和解成立を目指す手続きです。

裁判外紛争解決手続(ADR)

裁判所以外の第三者機関が、被害者・加害者間の調整を試みて和解を目指す手続きです。

訴訟

裁判所において、被害者・加害者(任意保険会社)の双方が、損害賠償責任の有無・金額について主張立証を行い、責任や損害額を確定させる法的手続きです。

 

②慰謝料の相場

交通事故の死亡慰謝料を算定する際には、以下の3つの基準のいずれかが用いられ、基準によって金額が異なります。一般的に、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準の順で高額になります。

自賠責基準

自賠責保険で慰謝料を算定する際に用いられる基準です。交通事故の被害者を最低限補償するための基準ですので、3つの基準のうち最も低額になるのが一般的です。

任意保険基準

任意保険会社で慰謝料を算定する際に用いられる基準です。任意保険会社が独自で定めており、詳細は非公表ですが、自賠責基準に少し上乗せした程度の金額になることが多いです。

弁護士基準(裁判所基準)

弁護士や裁判所が慰謝料の算定をする際に用いられる基準です。過去の裁判例をもとに作られているため、3つの基準のうち最も高額になるのが一般的です。

 

③損害賠償請求できる費用について

突然の交通事故によって愛する家族を亡くし、被害者のご遺族が加害者にできる責任追及は、大切な人を失ったことによる慰謝料をはじめとする「損害賠償請求」です。精神的にダメージを受けているなかで加害者側と交渉を行うのはストレスを感じられるかもしれません。しかし、後悔しないためにも損害賠償請求は適切に行うことが大切です。
交通事故の被害者が死亡した場合、遺族が加害者側に対して請求できる主な項目は、(ア)葬儀関連費用、(イ)治療費・入院費、(ウ)生きていた場合の将来分の収入、(エ)死亡慰謝料の4つに大きく分けられます。

葬儀関連費用

死亡した被害者の葬儀に関連して支出する葬儀関連費用は、交通事故と相当因果関係を有するものとして、損害賠償の対象となります。ただし、葬儀関連費用すべてが損害賠償の対象となるわけではなく、使途によって取扱いが異なる点に注意が必要です。葬儀費用にはお通夜、お葬式のほかに、墓碑建立費、仏壇費、仏具購入費が含まれますが、これらは個別で判断されることになります。
葬儀費用の支払いの基準は、自賠責基準と弁護士基準で異なります。自賠責基準の場合、葬儀費用として一律100万円、弁護士基準の場合、葬儀費用として、原則的に150万円を上限に実費が補償されます。

治療費・入院費

死亡前に治療費や入院費などがかかった場合、その実額の損害賠償を請求できます。治療費には診察料、検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料等が含まれますが、必要性があり相当な範囲内での実費額が損害として認められています。これらの費用は病院の診断書や診療報酬明細書等により立証するため、領収証などを保管しておき、漏れなく請求しましょう。

生きていた場合の将来分の収入(過失利益)

被害者が死亡すると、被害者が将来得られたはずの収入が得られなくなります。交通事故に遭わなければ将来得られたであろう収入を失ったことによる損害を「逸失利益」といいます。これは下記の式によって計算され、損害賠償の対象となります。

過失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

死亡慰謝料

死亡事故では、被害者の方の慰謝料と近親者の方の慰謝料があります。被害者が死亡したことによって精神的な苦痛を受けた被害者本人とご家族に対する慰謝料です。飲酒運転や無免許運転、ひき逃げなど加害者の過失がひどい場合や被害者に被扶養者が多い場合には増額が認められます。
死亡事故の場合の慰謝料は、被害者の方の家庭における立場によって金額が設定されており、おおよそ以下のようになります。

◆被害者が一家の支柱の場合:2700万円~3100万円
◆被害者が母親・配偶者の場合:2400万円~2700万円
◆被害者がその他の場合:2000万円~2500万円

 

④弁護士に依頼するメリット

示談交渉に伴う時間的・精神的負担が減少する

弁護士にご依頼いただければ、加害者側との示談交渉を一括して代行いたします。大切なご家族を失い、遺族は精神的にダメージを受けていらっしゃると思います。交通事故のことを思い出してしまうため、示談交渉をご自身で行うのは苦痛だという方も少なくありません。弁護士に一任いただければ、時間的・精神的なご負担が大きく軽減されるかと思います。

裁判所基準に基づき、適正な損害賠償を請求できる

弁護士が交渉を行うことによって慰謝料の増額が見込めます。弁護士を代理人として示談交渉に臨んだ場合、裁判例に沿って客観的な損害額を算定する「裁判所基準」に基づき、適正な額の損害賠償を請求することができます。裁判所基準に基づく賠償額は、任意保険基準の倍額近くに及ぶケースもあるため、弁護士を通じた示談交渉を強くおすすめいたします。

調停・ADR・訴訟に発展した場合も安心

示談交渉がうまくいかず、調停・ADR・訴訟に発展した場合でも、弁護士が代理人に就いていれば安心です。経験豊富な弁護士にお任せいただければ、複雑な手続きに戸惑うことがなく、スムーズに対応できる点も大きなメリットです。

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