高次脳機能障害

交通事故では激しい衝撃が加わりますが、場合によっては事故の影響によって大きく頭を打ちつけることもあります。この衝撃は頭部であれば目に見える外傷だけでなく、脳にも影響を及ぼすことがあります。

交通事故に遭遇する前と事故後とで、少し様子が変わったなと感じられるぐらい記憶力や集中力が低下してしまった、仕事の要領が極端に悪くなってしまった、感情の起伏が激しく感情のコントロールが上手く出来ていないというような症状が発生しているのであれば、高次脳機能障害を負われている可能性があります。

「高次脳機能障害」とは、簡単に言うと、脳の損傷によって脳の働きが悪くなる障害です。
「高次脳機能」(こうじのうきのう)とは、認知能力(記憶力、集中力、判断力など)や性格・人格を司る脳機能のことをいいます。

脳の働きが悪くなる具体例としては、記憶障害、注意障害、失語、失行などです。
「失行」というのは、服を着られないとか、地図を見ても地図のとおりに歩いていけないとかの状態をいいます。

脳外傷による高次脳機能障害と認定されるための判断要素

自賠責保険においては、以下の各所見を総合的に検討して、脳外傷による高次脳機能障害であるかが判断されています。

(1)交通外傷による脳の受傷を裏づける画像検査結果があること

脳外傷による高次脳機能障害が認定されるためには、CTやMRI画像の所見が重視されます。
CTやMRI画像での継時的観察による脳出血や脳挫傷痕が確認できる場合には、認定されやすいです。
CTで所見を得られないが頭蓋内病変が疑われる場合は、受傷後早期にMRIを撮影することが望ましいとされています。
ただし、びまん性軸索損傷は、神経コードの広範な断線が推定される症状ですが、確認することが難しいとされています。そこで、事故後ある程度期間が経過した時点で、CTやMRI検査により、脳室の拡大や脳全体の萎縮が確認されれば、神経コードの断線(軸索の組織の傷害)が生じたことを合理的に疑え、発症していると認められるとされています。
以上から、事故後早期のCTやMRI画像、ある程度期間が経過した時点のCTやMRI画像など継時的な画像が必要となってきます。

(2)一定期間の意識障害が継続したこと

この要素が極めて重要とされています。
受傷直後において、半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態が6時間以上継続すると、後遺障害発生のおそれがあるとされています。
また、健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続くと障害発生の可能性が出てくるとされています。
なお、この数値は、判定基準ではないので、「この数値に達していないから認定されない」と思わないように注意する必要があります。
高次脳機能障害の認定にあたっては、医師に、「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書面に意識障害の内容・程度を書いてもらうことになります。医師に正確に記載していただく必要があり、記載内容に疑問がある場合には、カルテ等で正確性を確認することが必要となることもあります。
正確性の確認にあたっては、弁護士がサポートすることもできます。

(3)一定の異常な傾向が生じていること

具体的には、

  • 感情の起伏が激しく、気分が変わりやすい
  • 場所をわきまえずに怒って大声を出す
  • 並行して作業することができない
  • 起立障害・歩行障害

などの傾向です。
精神症状等に関する回答である「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書面に精神症状を医師に記載してもらう必要があります。医師に正確に記載してもらうよう、症状を具体的に伝えておく必要があります。
家族等身の回りにいて被害者の状況把握が可能な方が作成する「日常生活状況報告」も必要になってきます。
医師へ症状を具体的に伝えるために、弁護士がサポートすることもできますし、「日常生活状況報告」作成にあたっても弁護士がサポートできます。

高次脳機能障害の認定基準

等級 認定基準 自賠責保険金額
1級1号
(要介護)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
・身体機能は残存しているが高度の認知症があるために、生活維持に必要な身の回りの動作に全面的介護を要するもの
4000万円
2級1号
(要介護)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
・著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
3000万円
3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
・自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
2219万円
5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの。
7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
1051万円
9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することが出来る労務が相当な程度に制限されるもの
・一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの
616万円

高次脳機能障害は、一見すると「体調が良くないのでは?」などと気に留めずに見過ごしてしまうことがあります。しかし、高次脳機能障害においても、他の後遺障害同様に早期に適切な治療を開始することで、高次脳機能障害の症状を軽減できる可能性があります。

「事故に遭ってから人が変わったような気がする」など、些細なことでも高次脳機能障害だと疑われる症状があれば、まずは高次脳機能障害に詳しい弁護士にご相談することをお勧め致します。

お問い合わせ
メールでのお問い合わせ
0569-25-0008
営業時間:
平日9:00~18:00
(夜間及び土日祝は応相談)
電話受付時間:
9:00~21:00(年中無休)
半田みなと法律事務所 半田みなと法律事務所 債務整理