自動車損害賠償保障法
自動車事故の被害者は、加害者に対して、事故により被った損害の賠償を請求できます。しかし、一般の不法行為責任に基づく場合は、原則として被害者の側で「加害者に故意・過失があったこと」を立証しなければなりません。そこで、自動車保有台数の増加と共に自動車事故が激増し社会問題となっていた昭和30年に、自動車事故被害者の救済を目的として制定されたのが自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」)です。
自賠法は
①損害賠償請求の根拠規定となる「運行供用者責任」という新たな責任を創り、②運行供用者責任に基づく損害賠償債務の履行を補完するために、自動車の保有者を被保険者とする強制保険である自賠責保険制度、および③自賠責保険による救済が受けられない(ひき逃げ事故など)被害者の救済を目的とする政府保障事業を主な内容としています。
運行供用者責任では
被害者の側が加害者の過失を立証する必要はなく、運行供用者の側が自分に過失がないことを立証しなければなりません。被害者が、損害賠償を得やすくしているのです。
また、被害者は、加害車両を運転していた者だけでなく、加害車両の運行供用者に対しても責任を追及できることで、被害者が損害賠償を得やすくしています。
運行供用者責任の根拠は
危険責任(危険物の管理者は危険物から発生した損害に責任を負うべきという考え方)と報償責任(利益を上げる過程で従業員等が他人に与えた損害は、利益を得る者が負うべきという考え方)があるから、とされています。
「運行供用者」とは、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する」とされています(最高裁昭和43年9月24日判決)。この判決から、「運行支配」と「運行利益」があることが、運行供用者に該当するための要件となっています。
運行供用者の具体例として、わかりやすいのは、加害車両の所有者、加害車両を所有する法人です。
訴訟で運行供用者責任を追及する原告は、被告に運行支配及び運行利益があることを基礎付ける自動車の利用権原、例えば「被告が当該自動車の所有者である」を主張立証すればよく、その立証が成功した場合には、被告は、事故発生時に運行支配が失われていたこと、例えば「当該自動車が盗まれてから相当期間が経過してから発生した事故であること」等を主張立証しなければなりません。
加害車両の運転者だけでなく、運行供用者責任によって、他の人や会社に対しても損害賠償を請求できるかどうかについて、お悩みの方は、お気軽に半田みなと法律事務所にご相談ください。
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交通事故・労働災害に遭い、辛い出来事を体験された中でも、弁護士に相談しようと一歩を踏み出した方が、こちらの記事を読んで頂けていると思います。私も数年前に、親族を事故で亡くしました。大きな驚きと深い悲しみが今でも残っております。一歩を踏み出したあなたの想いを、是非受け止めさせてください。